負債比率の計算式や覚え方とは? 業種別平均や高い企業の改善策を紹介

当記事では負債比率について解説していきます。負債比率とはどういうもので、どう見ればどんな情報が得られるのか、当記事を読んで、理解を深めていただければ幸いです。

目次

負債比率から何がわかるのか|意味と英語表記を紹介

負債比率は、財務分析における重要な指標のひとつ。英語では、「Debt Equity Ratio:DER」と表記され、直訳すると負債と資産の比率という意味です。

実際の意味はもう少し厳密で、負債比率と言えば「企業の自己資本に対する他人資本の割合」を指します。直感的な表現をすれば、「企業自身の持ち金に対する借金の割合」と言い換えられます。

自己資本とは純資産、他人資本とは負債のことですが、このことは次段で詳しく解説します。

負債比率は負債を自己資本で割って求める

負債比率の算出に必要となる2つの項目

まずは、負債比率の算出方法について説明します。

前段で軽く触れましたが、負債比率の算出にあたっては、「他人資本」と「自己資本」という2つの概念が登場します。
負債比率を理解するためには、前提として、これらがどういうものかを理解しておく必要があるでしょう。

【負債(他人資本)とは】会社にあるお金のうち返済義務があるもの

他人資本とは、返済義務のある資金のことです。銀行等からの借入金や、社債の発行によって調達した資金がこれに当たります。
貸借対照表上においては、負債の部に表示されます。一般的には負債と呼ばれることが多いので、以降の文章においては負債(他人資本)と表記します。

【自己資本(純資産)とは】会社にあるお金のうち返済義務がないもの

自己資本とは、返済義務のない資金のことです。資本金や、留保利益である繰越利益剰余金等がこれに当たります。貸借対照表上では、純資産の部に表示されます。

負債比率|計算式を例題を用いて解説

それでは、負債比率の計算式を見てみましょう。

       負債
負債比率=─────── ✕ 100 【%】
      自己資本

前述の「負債」、「自己資本」が登場します。

具体的な数値を用いて計算してみましょう。

【case.1】

  • 負債の額が500万円
  • 自己資本の額が1,000万円

⇒負債比率=500万÷1,000万×100=50【%】

【case.2】

  • 負債の額が1億円
  • 自己資本の額が1,000万円

⇒負債比率=1億÷1,000万×100=1,000【%】

計算自体は単純です。「負債比率が高い=自己資本の額に対して負債の額が大きい」ということが数値で確認できるかと思います。

負債比率の覚え方とは|貸借対照表の位置から理解しよう

「あれ…負債と自己資本、どっちが分母でどっちが分子だっけ?」

公式を眺めて覚えようとしてしまうと、多くの人がこういった状態に陥ってしまいがちです。

覚えるためには、良い方法があります。貸借対照表を用いて視覚的に印象付けることで、混乱を避けることができるのです。

貸借対照表(B/S)の構造は、下記のようになっています。

右半分に注目してみてください。負債比率の公式と同じく、負債が上(分子)、純資産=自己資本が下(分母)という位置関係になっていますよね。

単なる語呂合わせのようなものですが、このことを頭の片隅に置いておけば、どちらが分子でどちらが分母か迷った時に役立つでしょう。

負債比率の評価|適正水準と業種別平均から目安をつかむ

考え方と5段階の適正水準(100以上〜900以下)

負債比率を含む財務指標は、それ単体ではただの数値に過ぎません。
正しく評価してはじめて有益な情報となるのです。

以下の表で、負債比率の大まかな目安を確認してみましょう。

100%以下自己資本で負債の返済が可能。健全な財務状況だと言える。
101%~300%無理のない範囲で返済計画が立てられる。標準的な水準だと言える。
301%~600%大きな問題があるとは言えないが、財務上の課題がある可能性がある。
601%~900%返済が滞る恐れが生じる。直ちに財務状況を改善すべきだと言える。
901%以上資本欠損や債務超過の状態にある恐れがあり、改善しなければ倒産の可能性もある。

100%をボーダーとして、高くなればなるほど財務状況が不安視されるということがおわかりいただけたと思います。

しかし、上の表はあくまで目安であり、必ずしもすべての状況が当てはまるというわけではありません。
業種や業態によって基準も異なるので、次段で詳しく見ていきましょう。

業種・業態別平均を見てみよう

上記の表にて5段階の水準を見てきましたが、業種・業態によって、平均値が異なる点には注意が必要です。

以下の表は、中小企業庁による各産業の平均負債比率の数値です。

産業負債比率
全業種147.09%
建設業144.85%
製造業119.30%
情報通信業81.10%
運輸業,郵便業183.12%
卸売業163.07%
小売業176.62%
不動産業,物品賃貸業173.35%
学術研究,専門・技術サービス業66.88%
宿泊業,飲食サービス業380.12%
生活関連サービス業,娯楽業176.72%
サービス業(他に分類されないもの)136.78%

業種ごとに大きくバラつきがあることが見て取れます。
特に宿泊業、飲食サービス業の数値は群を抜いて大きいです。これは、これらの業種が多額の初期投資、先行投資を必要とするためだと考えられます。

一般的には300%を超えると改善の余地ありと見られますが、これらの業種にはこの基準は当てはまらないことがわかります。

負債比率の適正化|高い企業が取り組むべき改善策とは

改善策①自己資本を増加させる

前述のとおり、負債比率は以下の式で算出されます。

       負債
負債比率=─────── ✕ 100 【%】
      自己資本  

これにより、負債比率を下げるためには、分母である自己資本を増加させれば良いことがわかります。

自己資本とは、貸借対照表における純資産のことでしたよね。
自己資本を増加させる=純資産を増加させるためには、以下のような改善策が考えられます。

  • 株式の発行等により資本金を増加させる(増資)
  • より大きな利益を上げて、繰越利益剰余金を増加させる

改善策②負債を減少させる

上記の式から、分子である負債を減少させることでも負債比率を下げられることがわかります。このことは直感的なイメージと符合していますよね。負債比率を下げる直接的な手段だと言えるでしょう。

負債比率と関係する企業価値・M&A

負債比率が高くなる=企業価値が高くなる

では、負債比率と企業価値の関係について触れていきましょう。

負債比率が高くなると、企業価値はどう変化するのでしょうか。結論から言うと、企業価値も高くなります。

前提として、ここで言う企業価値は、最もポピュラーな算定方法であるDCF法により算定されたものとします。
DCF法においては、大まかに言えば以下のような計算が行われます。

  • FCF(フリーキャッシュフロー)と呼ばれる、会社の自由に使えるお金を算定
  • WACC(加重平均資本コスト)と呼ばれる、会社の資金調達にかかるコストを算定
  • FCFをWACCで現在価値に割り引いて企業価値を算定

つまり、以下の要因で企業価値は高まります。

  • FCFが増加する
  • WACCが低下する

ここで、負債比率が高まると、以下の変化が生じます。

  • 支払利息等により節税効果が生じることで、FCFが増加する
  • 一般的に負債コストの方が自己資本コストよりも低いため、WACCが低下する

結果として、企業価値が高まるというわけです。

しかし、負債比率が高まりすぎれば、企業の信用の低下を招き、企業価値の低下に繋がります。負債比率のバランスは企業にとって非常に重要な事項だと言えるでしょう。

負債比率が高い=M&A時の評価に悪影響を及ぼす

M&Aの際にも、負債比率が注目されます。負債比率が高ければ、企業の資金繰りにネガティブな印象を与えます。逆に低ければ、財務状況が健全だと判断されやすいでしょう。

また、買収の段階においては、取引価格の設定に影響を与えます。負債が多ければその分取引価格が引き下げられたり、逆に負債が少なければより高く買取価格が設定される場合もあるのです。

M&Aを考えている場合は、負債比率はより低いことが望ましいと言えるでしょう。

負債比率の注意ポイント|数値の見方と分析方法について

会社の成長段階によって数値が大幅に異なる

負債比率が100%以下の場合は、外部から調達した資金の返済を自己資本で賄えるということなので、財務状況は健全であると言えるでしょう。

では、100%を超えている場合は不健全なのかというと、一概にそうとは言い切れません。

例えば、ある企業が急成長中であり、事業拡大のために多額の借入れを行った場合を考えてみましょう。その期こそ一時的に負債比率は高まりますが、成長中の企業としては自然な行動です。

負債比率を見る際には、数値の高低だけに注目するのではなく、その企業が現在どういった段階にあるのかを念頭に置いておく必要があるでしょう。

負債の中でも返済期限がないお金は除いて計算する

負債比率を算定する上での注意点として、返済義務のない負債を除いて計算することが挙げられます。

返済義務のない負債とは、返済期限が定められていない負債や、債権者側が事実上回収を放棄している負債等です。
こういった負債を除くことで、より実態に即した負債比率を算定することができます。

先方に提示する際にも有利な印象を与えられるため、留意しておくと良いでしょう。

会社の安定性を判断するには負債比率だけでは不十分

前述した通り、会社が成長段階にある場合は、負債比率だけを見て安定性を判断することはできません。

また、事前に多額の投資が必要となる業種においても注意が必要になります。
新店舗への設備投資等により、数値だけ見れば1,000%を超えてくる場合も多くあるようです。
同業他社の動向や業績の良し悪しを踏まえて数値を見ることが大切だと言えるでしょう。

次段で解説する、2つの指標と併せて分析することも効果的です。

負債比率と共に考慮したい2つの指標

①有利子負債比率

ひとつ目の指標は、有利子負債比率です。
負債比率と似た指標ですが、考慮する負債を有利子のものに限ったものがこの指標です。

有利子負債とは多くの場合は、金融機関等からの借入金を指します。
そのため、この指標は純粋な返済能力にフォーカスした指標であると言えます。

負債比率は100%を超えているのが標準的ですが、この有利子負債比率に関しては、100%未満であることが求められます。
有利子負債比率が100%を超えているということはすなわち、有利子負債の返済が自己資本で賄えていないということを表しているためです。

②自己資本比率

2つ目の指標は、自己資本比率です。

負債比率が自己資本に対する負債の割合を表すのに対し、この自己資本比率は総資本(負債+自己資本)に対する自己資本の割合を表します。
つまり、自己資本比率が50%であるということは負債と自己資本の額が等しいことを表します。
負債比率と同様に、安全性の分析に用いられる指標です。

自己資本比率についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
>>自己資本比率とは? 計算式や高すぎる場合のデメリットを解説!

負債比率の計算式や覚え方まとめ

負債比率について様々な観点から解説してきました。いかがだったでしょうか。

負債比率の算定方法に迷ったときは是非、貸借対照表をイメージして思い出してみてください。負債が上、自己資本が下でしたね。

改めて確認しておきましょう。

       負債  
負債比率=─────── ✕ 100 【%】
      自己資本  

負債比率は、企業の安全性を分析する上で欠かせない指標のひとつです。当記事が負債比率の理解への一助になれば幸いです。

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oneplus編集部

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